東京高等裁判所 昭和50年(う)915号 判決
被告人 青砥幹夫
〔抄 録〕
所論は、要するに、原判決は判示第一、第二の事実について警察官に対する確定的殺意を認定せず、未必的殺意を認定したにとどまっているが、被告人は共犯者森、酒井と同様警察官を殺害する確定的故意をもって本件犯行に加担し、機動隊員を殺害するという目的にそうべく右三名で従来の手製爆弾より威力があり、かつ確実に爆発するよう種々工夫をこらした爆弾二個を製造し、原判示第二の現場では酒井と意思相通じ、被告人が指揮をとって最も効果的な時期を選び右爆弾のうち一個を投てきして爆発させ、その飛散した破片等により三七名の機動隊員に重軽傷を負わせたものであって、被告人は本件当時既に爆弾の性能等につき相当高度の知識を有し、ダイナマイトの威力についても十分承知していたものであるから、これらの諸事実を総合判断すれば、被告人が警察官を殺害するという確定的故意のもとに、それを実現するために十分な威力がある本件爆弾を製造し、これを警察官に投てきして殺害しようとしたが傷害を負わせたにとどまり、その目的を遂げなかったものであることは極めて明白であるのに、確定的殺意を否定し、未必の殺意を認定した原判決は、証拠の評価を誤り事実を誤認したものであって、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのである。
なるほど、所論指摘の本件犯行の目的、本件爆弾の構造と威力、投てきの状況については、被告人及び弁護人の控訴趣意についてさきに判断を示したとおりであるが、本件爆弾が人を殺傷するに足りる十分な威力を有していたことについての被告人の認識の点については、前記のとおりダイナマイトの威力をも含め爆弾の性能等について相当の知識を持っていたとは認められるものの、更にそれ以上具体的実験的な知識、経験を有していたとは認められず(被告人は他の共犯者に比しその知識、経験は最も少ないと認められる。)、被告人は鉄パイプの両端と蓋との固定方法には疑問を持ち、本件爆弾の殺傷能力について十分な確信を持つには至っていなかったことが、被告人の昭和四七年五月一七日付検察官調書並びに原審及び当審公判廷における各供述によって窺われること、その他本件爆弾投てき時には機動隊員は楯を所持し、あるいは防護衣を着用するなど一応身体を保護する準備をしていたことなどを総合して考えると、原判決が判示第一、第二の事実において被告人に警察官を殺害することについての確定的殺意を否定し、未必的殺意を認定するにとどめたのは相当であって、原判決には所論に指摘するような事実誤認はない。論旨は理由がない。
(服部 藤井 中川)